陶磁器展示場

陶磁器を作成しています。高橋陽のブログです。

4月15日からギャラリーラボ、5月6日から炎色野で個展があります。

4月15日からギャラリーラボで個展があります。種類としては斗々屋、青唐津、頭洞里風の堅手、ぐい呑み手の黄瀬戸、赤楽です。

斗々屋は霞のような大胆に縮緬皺があって、釉薬が粒状に溶けたものを目指して作成しました。胎の色は赤系で派手目なものが多いですが、造形は茶碗だけでなく盃でも霞に範を取って作っています。釉薬の溶け方はそれぞれ差がありますので気になる方は問い合わせていただけるとありがたいです。

唐津は以前少しだけ出した、飯洞甕系の青唐津で白っぽい荒土の表面にサラサラした膜が張ったようなものです。

頭洞里は井戸を産したと言われている窯ですが、そこで数多く作られていた固く焼きしまったタイプの堅手をもとに今回作りました。表面はゆず肌気味のしっかりしたテクスチャーで水を吸うと立体感が出てくるような釉薬です。土も李朝風の炻器の特徴であるカンカンと音は響くのですが微妙に水を吸うという感じを再現できてるかと思います。使っていて楽しいタイプだと思います。

黄瀬戸はぐい呑み手タイプのものをいくつか出しています。もとは青瓷に使おうと開発していた釉薬ですが、黄色くなりやすいので黄瀬戸に仕上げました。溶けが微妙に甘いところは表面にイライラ感があって、十分に溶けているところはキラッとした感じの照り返しがある釉薬です。これを固く焼ける土に施釉すると非常に硬質なテクスチャーになりますが、焼き締まりの程よい土に施釉して柔らかい感じの質感に仕上げています。

赤楽は長次郎風の端正な造形に、黄味がかった少しぎりぎり溶けた感じの釉薬をせ有したものです。汚れ方も貫入に汚れが入らず全体的にボワッと色がつくように汚れるので使っていて汚らしくなることはないと思います。

 

炎色野では粉引、刷毛目、鶏龍山、青瓷、斑唐津を出す予定です。去年秋に涼一石で開催した個展と種類は同じようなものですが、全てなにがしか手を加えています。特に粉引は前回もかなり自信があったんですが、もっと良くなってると思います。現代的な普通の透明釉と比べて違いがより分かりやすくなっていると思います。斑唐津はより岸岳っぽい感じにすべく色々試行錯誤していますのでぜひご覧ください。

5月21日からの個展

5月21日から愛媛のギャラリーラボで個展を行います。

粉引など粉青沙器、唐津、青瓷を出します。無地唐津は今まで個展の際1、2個出したこともありましたが、無地以外にも絵唐津なども含めてまとまった数出すのは初めてですのでどうかご覧ください。黒唐津も少数出す予定です。禾目がかすかに見えるタイプで、黒高麗などでは禾目のあるタイプよく見ますが黒唐津にもたまにあるようです。ギャラリーラボにそういう黒唐津がありますので、興味のある方は来ていただくともしかしたら鑑賞の機会があるかもしれません。

 

無地唐津は主に錆谷や小森谷の土灰釉を参考にしています。この手の釉薬は別に2つの窯に特徴的なものではなくて似たようなものはかなり多くの窯で見受けられます。こういった釉薬はたしかに魅力的ではありますが、どこが?と問われればなかなか言葉にし難いところがあります。

無理に言葉にしてみれば、ちょうどよい溶け具合のときは灰が多いように見えてはっきりしたゆず肌が現れる程度には粘りを保ち、溶けすぎてガラス状になっても土のガッチリとした感じと相まって軽い感じがせず中身が密に詰まったような印象を受ける、そんな釉薬のように思います。この手の特徴は斑で言えば青い斑点が出るか出ないかといったわかりやすい表徴ではないのでどの程度良さが再現できているか自信を持って言えないところはありますが見ていただければ幸いに思います。

 

今回特に力を入れたのは粉引です。ここ数年雲岱里風の粉引の再現に力を入れてきましたが、肉薄してきたのではないかと思います。今回は特にガラス状につややかに溶けたタイプのものを目指して研究してきました。もちろんこれはただ釉面の起伏なくガラス状に溶けているだけのものではなく、表面になにか薄膜が一枚乗ったような独特の感じを有するものを指しています。

ただし、結局のところ本歌の粉引の魅力といえば染みが作る景色が一番に挙げられますし私もそう思います。他の粉青沙器も釉や造形など素晴らしく魅力的なものはあるにもかかわらず、名声の高さという意味では粉引は最上のものに位置づけられるのはその景色があるからでしょう(希少性というのはあるにせよ…)。

しかし染みがつくる景色と言うのはショートケーキでいえば苺のようなものであって、あれば一番に目立つものですが、だからといってそれだけ出されてもショートケーキとは言えない、そんな関係性にあるように思われます。魅力の土台たる部分を構成しているのは釉や土で、やはりそのくらい粉引を含むそれぞれの粉青沙器の釉薬というのは強烈な魅力を放っていると感じます。

それでそのショートケーキの苺たる染みなのですが、今回の作品は吸水しやすい化粧土を使ってますので何らかの染みができることは請け合いますが、どのような景色になるかまではちょっとわかりませんのでご了承ください。

趣味としてのやきものあそび ー 七輪陶芸のノウハウ

用意するもの

七輪 2個

耐火粘土

ドライヤー

耐火手袋

耐火煉瓦(SK34)3個

炭 成形炭

薪 松など火力の強いもの

 

作っておくもの

耐火粘土を使った棚とトチ

燃料投入口の蓋(断熱耐火レンガを切ったもの、もしくは耐火粘土を使って作っても良いが割れやすい)。普通の耐火煉瓦と比べて断熱耐火レンガははつりやすく、軽いので取り回しが良い。

 

そろそろ焼き物をやり始めてから中断期間はありますが、趣味でやってた頃から数えて7、8年位でしょうか。

最初は趣味でと言っても陶芸教室などではなく、七輪陶芸をやってました。2年位それで遊んでいましたので嫌でもその中でまずまずノウハウが溜まっていくわけです。その技術は今となってはほとんど役に立ってませんが、我ながら七輪でこれほど上手に施釉陶器が焼けているケースを見たことがないので、ただ腐らせておくのもどうかと思い記事にしておきます。

灰釉

左の小碗 拡大

 

 

右上は引き出し黒

具体的な手順の前に構造をざっと提示しておきます。まず七輪を配置しその縁にコの字型に耐火煉瓦を配置します。その際、コの開いてる部分を成形炭を途中で投入可能な程度の大きさまで角度を調節してすぼめておいてください。そのレンガに橋をかけるように棚を設置し、その上にトチを置き作品を伏せて設置します。その上からもう一つの七輪をかぶせたら完成です。

これで燃料の逐次投入が可能になり温度を上げることができ、炭と器物の直接の接触もなくなるので過度に汚れることもなくなります。ただし大きいものでも10cmくらいのものが焼成可能なものの限度になります。私は使ったことがありませんが幅の広い七輪もありますのでそういうものであればもっと大きいものも作れるかもしれません。

 

まず七輪の炭を入れる部分の内壁に耐火粘土を塗りつけていきます。これは成形炭が単味でもガラス化してしまうのでそのまま高火度釉を溶かすくらい温度を上げると七輪へのダメージが激しいからです。通気口は塞がないでください。

もう一つ耐火粘土を使って作って欲しいものがあります。棚とトチです。棚は火が通過しやすいようにはしごのような構造にしておきます。縦長のHかそれにもう一本横棒を増やした程度が適当です。それ以上すると温度が上がりにくくなります。トチは伏せ焼きのために一般的なトチとは逆に支えるものを作ります。つまり伏せ焼きにしたときに口縁部分が棚に触れないように、見込みにトチの跡がつくようなものを作ります。これは一般的なトチの突起3本をグーンと伸ばして構造的に強くするために横棒を途中で一本渡したくらいのものでいいでしょう。順番が逆になりましたがなぜわざわざ伏せ焼きにするかというと普通に高台を下にして焼くとなかなか見込みまで熱が回らず見込みの釉薬が焼けないからです。

内壁の粘土が乾いたらそこに成形炭入れ着火します。ドライヤーを使うなりするとスムーズです。入れる量は砕いた炭を使ってかなり少なめ(底から2,3センチくらい)にしてください。その少量の炭に火がついたら、その上に成形炭を4分の3くらい入れてください。炭を入れたら高温になる前に前述のようにレンガをコの字型に配置し、棚とトチ、そのトチに施釉した器(生掛けでいいです)を伏せておいたらその上から七輪をかぶせます。被せる七輪の排気口は燃料投入口とは逆にしておいてください。排気口からは炎が出ますのでそのほうが安全です。1時間位何もせずほったらかしておくと最初に着火した少量の炭から徐々に火が回りきり、かぶせた七輪の通気口に手をかざせないくらいの熱さになっていると思います。

そのくらいの熱さになったらドライヤーの出番になります。燃料投入口をふさいでからドライヤーを使って七輪の通気口から送風します。長時間使うので冷風で使用してください。ドライヤーの送風力にもよりますが、100%空気が入るようにアルミホイルなどでドライヤーと通気口をつなぐパイプのようなものを作ってもいいでしょう。ただし最初はゆっくり送風していきます。普通のドライヤーであれば半分か3分の2くらい外しておけばいいと思います。しかし私の経験では炭に火が回って以降はそれほど慎重にならなくても割れることはないように思います。炭が減っていったら適宜投入してください。

かぶせた方の七輪にまで火が回ってきたらドライヤーの最大出力で送風していきます。そうなるとどんどん炭がなくなっていきますので、火力を見ながら炭を投入してください。このようにして温度を上げていくと火の色が赤から白へと変わっていくと思います。ただ炎が白っぽくなってもまだ釉薬は溶けていません。釉薬が溶けたか判断するポイントは焼いている器物が光り始めて輪郭があやふやに見えて来たかもしくは輪郭が見えなくなってきたかどうかです。かぶせた七輪の排気口から覗いて確認してください。そうなると溶けたと判断していいでしょう。かなり近い距離で器を視認できるので、温度計を使わなくても適当なタイミングで止めるのはされほど難しくはありません。何回かやってその釉薬にあうタイミングを見つけてください。窯が痛むのであまりお勧めしませんが、溶けたかなと思った段階でかぶせた七輪を取って(軍手と耐火手袋を二重にすれば大丈夫です)、直接見ると照りがはっきり分かるので溶け具合がわかります。確認したら素早くかぶせ直してください。急冷すると器物が割れます。

その炎が白くなるまでは比較的簡単に進行すると思いますが、そこから釉薬が溶けるまでが七輪陶芸で一番大変です。普通に炭を投入するだけではなかなか温度が上がりません。いくつかコツを書いておきます。

  1. 炭を3,4センチ角に砕いてスコップなどで一気に投入する
  2. 松など火力の高い薪を投入する
  3. 下の通気口に細く切った薪を突っ込んで熾を撹拌する

この3つを併用すれば温度が上がってくれるかと思います。ここでなぜ成形炭なのか書いておきたいと思います。七輪陶芸の紹介ではマングローブ炭や酸化焼成を狙うときは備長炭、もしくはコークスなどを使うように書いてあることが多いですがこれはよくありません。まずマングローブ炭は塩分など器を汚す成分が含まれていることがおおいので釉薬に悪影響を与えます。自然釉などを狙うときは悪くはないですが、私は灰釉を塗布して自然釉風の作品にするほうがより良いものが焼けると思います。中世の自然釉風のものでも実は施釉されているものがあるのでそのあたりが参考になるかと。七輪陶芸では自然釉のものを主に焼いてる人が多いような気がしますが、実はかなり難しいです。マングローブ炭を使うとまあまあのものはできますが釉薬の縮れや色など塩釉に近い性質の釉薬になってしまいます。かと言って薪や楢炭などで自然釉を狙うとかなりの降灰量が必要になるので、常滑の山茶碗のようなものを狙うのであれば施釉することを勧めます。

備長炭などを含む普通の木炭は温度が高い状態の燃焼室にいきなり投入するとハゼます。爆ぜると燃焼室の中で必要以上に細かくなり温度上昇の妨げになるのに加え火の粉が大量に舞って非常に危険です。その点成形炭は爆ぜることもなく、火力も十分で器も汚くなりません。成形炭を使ってください。コークスは温度が上がってくると粘るようになるのでこれも通風を妨げて良くないです。ただし伏せ焼きにした高台裏に乗せておいて温度を上がりやすくする用途には使えます。

最後にどのような釉薬が適するのかを書いておきます。わら灰釉などを含む灰釉(薄めに施釉)、黒釉(ただし流れにくいもの)、灰が3割程度入った透明釉や土灰釉などが良いと思います。これらは少し灰の影響があっても汚く見えず、流れ過ぎることもないので伏せ焼きでも変に見えません。逆に青瓷など還元と酸化をコントロールする必要があるものや志野や白磁など灰の付着が汚く見えるものなどは向きません。

楽焼などもいいでしょう。この方式ですと本職の人が使う窯とそう相違はないので工夫次第でかなりよく焼けると思います。

 

私が焼き物をやり始めた頃は、ネットで探すと色々と好事家たちの試みが出てきたものですが、その頃と比べるとやっている方は少ないようです。その理由をなんとなく想像するに、ただ焼き物を焼結させるのは簡単ですが使うに値するものを焼くのが難しいので結局焼成の面白さのほんの一端を知ったのみで飽きてしまうことも一つの理由かなと思います。成形や釉薬調合などはやろうと思えば陶芸教室でも手軽にできますし、原料調達も比較的簡単です。

しかし焼成だけは手軽とはいかないと思っている方も七輪陶芸なら出来ます。焼ける数がどうしても少ないのでプロ並みの熟練度に至るのは難しいですが、遊びとしては本当に面白いと思います。焼き物は原料の選択から焼成までやることで本当の面白さを理解できます。もし興味がある人はやってみてください。

 

1月8日、ギャラリーラボでの展覧会について

1月8日に愛媛のギャラリーラボで展覧会をします。今回は長戸さんとの二人での展覧会となります。

主に朝鮮唐津と絵粉引を出展します。絵粉引は前回一点だけ出しましたがいずれもほぼ初出展なのでご覧いただければ幸いです。点数は30から40くらいになると思います。

2021年11月6日からの展覧会

11月6日からギャラリーラボにて展覧会を行います。

唐津、粉引、青瓷を中心にいくつか新しいカテゴリーのものも出品しています。

古い斑唐津オパールなどに例えられたりしますが、その釉表面上に遊色効果のようなものが見られることに由来するようです。今回出品したものにもいくつか類する物がありますので気になった方はご覧いただけると幸いです。写真ではわかりにくいかもしれませんのでその際は問い合わせていただけるとよいかと思います。

粉引は触ったときの硬質感、素地がよく焼けた雰囲気が出るようにしました。釉の組成自体も改良してますが、素地の性質に引っ張られて質感が変わるようです。青瓷の流れを汲むせっ器系の生地を使った粉青沙器はやはり釉薬だけを云々しても良い結果は得られないように感じてテストを重ねました。直接ご覧いただきたいです。

青瓷は今までと違うものですので写真を御覧ください。色味質感などわかりやすいかと思います。

 

皿や茶碗、小服茶碗などネット配信の方でいくつか出てくると思います。ギャラリーラボのサイトの「お問い合わせ」のページからメールアドレスを登録するとメルマガの形で先行配信されますので、興味お有りの方は登録お願いします。

10月17日からの展覧会詳細

17日から東京と愛媛で展覧会行います。

 

東京の涼一石では現在作っているものを概ね出展します(斑唐津、粉引、刷毛目、青瓷、鈞窯)。斑唐津と粉引の点数が多めで、今までそれほど作っていなかった食器類も少し並びます。特に粉引は春の個展とはかなり違いがありますので、ぜひ直接ご覧いただきたいと思っています。雲岱里の粉引に範を取った、滑らかで独特の硬さを感じる釉質に少しでも近づかんと研究した次第です。

唐津の盃も結構な点数出しますので、いろんな景色のものからお好みのものをお選びいただけると思います。

 

愛媛のギャラリーラボでも同時期に開催しますが、長戸裕夢さんとの展覧会となります。だいぶ攻めた試みをしてますのでここでは詳細には記載できないのですが、DMやホームページの方を見ていただければと思います。ただし出品物は涼一石の個展とは器種や形が被らないようにしておりますので、どちらも見ていただくと嬉しいです。