熊川について
以下、自作の熊川について説明です。
熊川茶碗は高麗茶碗の一種で、主に形に従って分類されるようです。丸っこい碗なりとはっきりとした端反り、見込みの鏡が特徴です。
釉薬や土は本歌でも非常に多様で、枇杷色のザックリしたそれほど焼き締まってなさそうな土からほとんど白磁のような硬く緻密な土まで使われています。釉薬は透明釉ですが、高麗青磁的な柔らかさを持つものから、近代的な白磁に使われるようなピカッとした清潔感のあるものまで色々です。
よって、井戸のような土と釉薬の熊川形茶碗も出てきます。また、雨漏りや片身替わり、御本、小貫入などが出ているものもあり李朝陶磁的な要素をそのカテゴリーの中にかなり内包していると言えそうです。しかし、殆どの熊川茶碗には土見せがあり、それだけは一般的李朝陶磁に反する部分ですが、これは熊川茶碗の形とあいまって、天目の様式を踏襲している可能性があるのでは、と考えています。
土は漏らない程度のポロポロした質感の土で、使っているうちの変化がはっきり見えると思います。釉薬はピカッとしたものよりも柔らかい質感のものを目指しました。
上の杯は見込みや幾つかのピンホール部分に雨漏りが見て取れます。雨漏りが形成されるには、吸水性が高い土というだけでは不十分らしく、着色しやすい性質も合わせて求められるようです。
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斗々屋について
斗々屋は李朝の時代に作られたものですが、青磁から白磁への移行の過程でいわば徒花的に作られた堅手や井戸などとは全く違う特徴があります。
斗々屋の特徴としては、御本が出ている、白色でない、土がサクサクしていて縮緬皺が出ている、などが挙げられますがすべてを兼ね備えていないものも斗々屋と呼ばれています。最低限、薄い釉薬がかけられた有色の李朝茶碗であれば斗々屋と分類されるうるようです。
釉が非常に薄く、青磁や白磁のような均一な色や質感は端から目指していないように感じられます。また、土との反応が顕著で、金属量の僅かな差、焼成条件の違いで多様な色彩を示します。ただし、本歌の中には磁器のごとく固く焼き締まっているものが少なくないようで、器形も平茶碗や口辺が外反した碗なりの重ね積みのしやすそうなものが多く、白磁のように実用的な陶器とも言えそうです。しかしながら、その侘びた風情から一部は日本からの注文で作られたとの説もあるようです。
今回作成の斗々屋では色は枇杷色から朽葉色、その中で御本や片身替わりなど、土と釉薬の反応の面白さを感じさせるような焼成条件を狙いました。器形は特に何かをモデルにせず重ね積みしやすく、茶が飲みづらくないことを基準に作っています。縮緬皺の様相は削りのタイミングや道具で変わってくるので、出ていないものもあります。
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堅手について
堅手は李朝において白磁を目指して作られたが、そうなり切れなかった物の総称という感じでしょうか…。結果的に様々な形態を取るようです。
青磁と白磁の合いの子、焼き締まっているが白くないもの、白さは十分だが焼き締まっていないものなど…。その中で特に見どころのあるものは金海や玉子手など、カテゴライズされますが、そうでないものを一緒くたに堅手と称されているようです。井戸手なども堅手の一種と見るむきもあるみたいです。
こちらは素地は焼き締まっていますが黄胎青釉。玉子手といえばそうでしょうか?釉薬にも土にも微妙に色づきが見られるもの。
こちらは青みが少なくなった青磁。土は灰色、焼き締まっています。
堅手は粗雑な白磁、または高麗青磁から李朝白磁へと至る試行錯誤の過程であるとも捉えることができると思います。そして一部、高麗青磁の技術を元にしたような、とても柔らかみのある質感のものが見受けられます。一方、元以降の中国の白磁は釉薬がどちらかと言えば硬質な印象で、青磁から試行錯誤を経て白磁へと至った李朝の白磁とは一線を画すように感じられます。
上の写真の堅手は焼き締まりや色など様々ですが、独特の釉薬の質感、つまり水を含んだような潤いが感じられたり、蝋でコーティングしたような柔らかい感じを目指して作成しました。