陶磁器展示場

陶磁器を作成しています。高橋陽のブログです。

10月の展覧会について

10月中旬に東京の涼一石と愛媛のギャラリーラボで展覧会を行います。具体的な日程は各ホームページをご覧ください。

各ギャラリーごとコンセプトを分けて被らないように出展しますので、どちらも見ていただけるとありがたいです。

 

渋谷から移転する炎色野が今年中に再開するそうです。年末の予定とのことですが、その際にも数は少ないですが数点酒器を出す予定です。

最近の活動について

先月、4月11日から愛媛のギャラリーラボさんで個展をいたしました。

これまで作成していたもの以外に粉青沙器もいくつか(刷毛目、鶏龍山、粉引)出展しました。

粉青沙器は大雑把に作っているようでいて、様々なノウハウの集合体ですので手を出しかねていたのですが、材料もある程度集まりこの度出展となりました。このあたりは今後も継続的に取り組んで行くと思います。斑唐津も主に酒盃に新しい手のものを出しましたが、土がより緻密に焼きしまった感じは以前よりも良いかと… 釉薬もだいぶ変えているのですが、以前との違いは実物を見て確かめてほしいところです。

 

今後の予定ですが、10月始めころに東京で個展の予定です。コロナによってはどうなるかわかりませんが、その予定です。

 

以下に取扱店を記載しておきます。在庫などは各店舗にお問い合わせください。

 

ギャラリーラボ(愛媛)

うつわや 涼一石(東京)

ギャラリーふしきの(東京)

現代工芸藤野屋(栃木)

 

 

斑釉3

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焼成方法と胎土の精製を少し変えてます(大きい砂粒を取り除いて、肌理の揃った粗い土にしてます)。ほんの少し徐冷にして、還元をしっかりかけました。

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薄曇りがかかりながらも、キラッとしたツヤが出ていると思います。白地も微妙に灰色。岸岳系の斑によくある配色だと思います。

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こちらは曇りは弱いですが、テクスチャーに潤いがあって少し違う焼けになっています。青斑の出方は非常に良いと思います。

 

以下のサイトでも販売してます。

www.creema.jp

斗々屋の釉質と緋色

 

kirsch.hatenablog.com
主に釉薬と土について。全体的なことは上のリンクをご覧ください。

 

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斗々屋は普通の透明釉のことも多いですが、それ以外にもいくつかパターンが有り、その中でサラサラした、粒感のあるものに近づけないかと思い試行錯誤しました。

こう言った粒感は比較的単純な長石主体の釉薬でも似た感じになります、そうすると今度は焼くのが難しいです。長石は溶けてから流れるまでの温度帯の幅が広い(ただ焼くことを考えた場合)使いやすい釉薬ですが、その幅の中で温度や時間によって表情を変えます。ただ、このサラサラ感は古作の中ではそれほど稀なものではないため、焼き方に関わらずこの様になりやすい組み合わせを探ってみました。

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粒感というかまずまずサラサラ感は出ていると思います。土の発色も御本というか緋色。斗々屋に限らず、見込みに赤みがさしている高麗茶碗がありますが、これは土の性質だけでなく重ね積みのため、冷却中に下の器物から熱が上がってきて徐冷されるからではないかと思います。

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ほとんど鉄分がない土です。一部分ではなく見込みを中心に全体に赤みが広がっている。御本は徐冷とそこまで相関がないようですが、緋色はある程度ゆっくり冷えないと出てこないようです。

 

斗々屋の轆轤目について補足しますが、「霞」や「ただし、薄さを考えなければ井戸のような大小の動きのある轆轤目がつくようなやり方も出来る。また、まとまりのない(水に溶けやすい)土を使用した場合、力を加えると形が変わるとともに容易に削れていくためそれほど強い力を加えなくてもはっきりとろくろ目がつきます。

 

以下のサイトでも販売してます。

www.creema.jp

斑 ぐい呑

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カイラギと言うか、釉薬全体に気泡が発生し、凸凹しています。炎の影響を如実に感じられる焼き上がりかと思います。釉薬の構成は他の斑と似たようなものですが、焼成方法を変えています。

窯出し後、一見して失敗だなと思いましたが、よく見ると悪くないような気がしたので、古色を付けてみると藤ノ川内窯の斑に似ているものがあることに気づきました。藤ノ川内の胎土は鉄分の多いものなので、釉薬により色がついていることが多いですが、写真を見る限り似ていると思います(ネットには適当な画像が転がってないので載せられませんが、別冊太陽の古唐津を参照)。古作と似たところがあれば良いかと言うとそうではないですが、伝統的製法のようなのに一見して見慣れないものは何となく怪しさを感じるのは私だけではないと思います。

例えば数学や物理学であれば第一印象はどれだけ奇抜でも、一定のやり方及び基準に従ったものなので丹念に勉強して思考を積み上げれば概ね理解できるようになっているわけです。しかし、現在の芸術には一定のやり方はありません(美しさという基準、作法が強力だった時代があったものの)。知識のある人が一見して意味不明なものは、よーく見て調べてみても結局意味不明だ、ということも普通にあるわけです(=悪い作品)。ですからその作品の良さを理解してもらいたいとするなら、見た時の印象を強くすると同時に作品理解の糸口を用意する必要があります(例えば利休はピカピカの板の間に黒楽茶碗を置いたりはしなかったわけです。)。そういった意味で、この焼き物は~時代の~窯に似ているという糸口があった場合、技法はその窯に準拠した比較的伝統的なものだろうとか、コンセプトとしてはその時代に関係があるだろうとかいう情報を読み取ることができます。ですからそれを読み取れればこの焼き物は例えば歪んでるから駄目だとか、焼けにムラがあるからレベルが低いとかそういったノイズを排除してどこに注意を払って作ったのか判断することが出来るわけです。

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斑というか陶磁器の特異性かも知れませんが… 陶片を作陶の参考にすることは多いですが、斑にはよく惑わされます。焼成条件の違いと土中での風化具合により発掘陶片の段階ではかなりの幅を示すようになります。出光美術館の古唐津展で、おそらく伝世であろう複数の茶碗、鉢、盃を見た時に思いましたが、よく見る陶片よりも照りがありかつ清潔な印象。陶片でよく見るようなサラサラした質感や曇りは流し掛けしてある朝鮮唐津の花生以外ではそれほど見受けられず、意外な感がしました。伝世品、発掘品、実物、画像、見ていくと本当に多様な斑唐津があります。

陶磁器は絵画や彫刻などと違って、何か自然物などをモチーフにしてそれを写し取るということから始まった芸術ではありません。陶磁器そのもの、またはそこに現れる特有の現象を賞玩してきたわけです。(窯業が発展するに従って、青磁のような玉をそのまま写し取ったかのようなものや、なめらかな胎土の上に非常に精巧な絵を書くという白磁色絵などもでてきましたが。)予期してもいなければ、もちろん期待してもいない、たまたま現れる斑の無数の現象に陶磁器の本質的な魅力を見る気がしています。